糖尿病の合併症について
糖尿病では、血糖値の高い状態が長く続くと、体のさまざまな臓器に影響が出て、合併症を引き起こすことがあります。
合併症は大きく、急性合併症と慢性合併症に分けられます。
糖尿病の急性合併症
感染症、脱水、治療の中断、甘いジュースの飲みすぎなどがきっかけで、急激な高血糖を起こすことがあります。
主な急性合併症には、糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群があります。
いずれも放置すると命に関わる危険があるため、早期の治療が重要です。
糖尿病ケトアシドーシス
インスリンが不足して、ブドウ糖を細胞が使えなくなったときに起こります。
1型糖尿病の発症時や、インスリン注射を中断した場合に多く見られますが、清涼飲料水を大量に摂取した場合(ソフトドリンクケトーシス)にも発症することがあります。体はエネルギー源として脂肪を分解し、その結果生じるケトン体が血液中に増えると、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、脱水が進みます。
主な症状は、強い口渇、多尿、倦怠感、腹痛、吐き気などで、重症化すると意識障害を起こすこともあります。
早期の点滴治療とインスリン投与が必要です。
高浸透圧高血糖症候群
主に高齢の2型糖尿病の方にみられます。
肺炎や尿路感染症などの感染症、嘔吐や下痢による脱水、手術などのストレスがきっかけで発症することが多いです。
血糖値が600mg/dL以上になることもあり、強い脱水や倦怠感、意識障害を伴います。
インスリンはある程度分泌されていますが、それでも十分でないため高血糖が持続します。
治療は点滴による水分補給とインスリン投与が中心です。
糖尿病の慢性合併症
高血糖が長期間続くと、血管が少しずつ傷つき、将来的に心臓病・脳卒中・腎不全・失明・足の切断など、重い合併症を引き起こすことがあります。
これらの合併症は数年から数十年かけてゆっくり進行し、症状が出にくいため、気づかないうちに進むことも少なくありません。
定期的な検査と適切な治療が非常に大切です。
慢性合併症は、障害される血管の太さによって細小血管症と大血管症に分けられます。
細小血管症:しめじ
細い血管が障害されて起こる合併症で、糖尿病の「三大合併症」と呼ばれます。
「しんけい」「め」「じんぞう」の頭文字をとって、“しめじ”と覚えます。
・糖尿病神経障害:足のしびれや痛み、自律神経症状(立ちくらみ・便秘・発汗異常など)がみられます。
・糖尿病網膜症:網膜(目の奥の神経)が障害され、放置すると失明につながります。
・糖尿病腎症:腎臓の働きが低下し、最終的に透析が必要になることもあります。
これらは定期的な神経・眼底・尿検査で早期発見が可能です。
大血管症:えのき
高血糖が長期間続くと、血管の壁が硬くもろくなり、動脈硬化が進行します。
これに高血圧・脂質異常症・肥満・喫煙・加齢などが重なると、大きな血管に障害が起こります。
代表的なものは以下の通りです。
足病変・壊疽(えそ)
血流障害により足の傷が治りにくくなり、重症化すると切断が必要になることもあります。心筋梗塞(虚血性心疾患)
心臓の血管が詰まり、胸の痛みや息苦しさを伴います。脳梗塞
脳の血管が詰まり、手足のまひや言葉の障害を起こします。
「えそ」「のうこうそく」「きょけつせいしんしっかん(心筋梗塞・狭心症)」の頭文字をとって、“えのき”と覚えます。
合併症を防ぐために
糖尿病の合併症は、早期発見と血糖コントロールの維持で予防・進行抑制が可能です。
合併症を防ぐためには、定期的な検査(血糖、HbA1c、尿検査、眼底検査など)が大切です。
医師と相談しながら、一緒に健康管理を続けていきましょう。